长文读解
正しい仕事の任せ方というのは、一体どのようなものだろうか。
理想的なのは、部下の実力よりも少し上のレベルの仕事、部下がなんとか自分の力で判断・実行することができ、ときには(注1)を小さな失敗を招くであろうレベルな仕事を任せることだ。
そういう仕事を、段階的にレベルを上げながら与えていくことで、部下は着実には仕事力を磨いていくのだ。
ところが、そのような仕事を部下に与えたとしても、日本の会社では「ホウ・レン・ソウ」(報告・連絡・相談)などといって、上司がいちいち部下の仕事に干渉し(注2)がちだ。そして結局は、部下に自分の力でハードル(注3)を乗り越えさせないことが多い。
たとえば、あるプレゼン資料はを部下につくらせるとする。日本の会社の多くの上司は、全体像を示さず、ただ「こういうものをつくれ」と部下に曖昧に命じ、持ってこさせる。
そして、「ここをこう直せ」と要求し、部下はその意図がわからないまま上司の指示通りに修正をする。そんなことを何度も繰り返す。その結果、部下に身につくのは、エクセルやらパワーポイント(注4)の操作法だけ、ということになる。これでは、レベルの高いプレゼン資料を自分で考え、つくり上げる力はつかないだろう。
そうではなく、「この資料は、こういう目的で、こういう相手に対して、このように説得するために使用するものだ」という全体像を事前に明確に説明すべきだ。
そのうえで、見本を見せて、あとは部下の創意工夫(注5)に任せ、部下に最善だと思う資料ができるまで口出しはしない(注6)ことだ。
結果的に出来上がるものが、上司の想定するものと違うこともあるだろう。しかし、その資料を作る意図、全体像がつかめていれば、なぜいけないのか、どこが悪いのか、どう修正すればよくなるのかがわかるし、上司からの修正指示に納得もできるし、学ぶこともできる。
部下は、「いや、そういう目的なら、自分だったらこうするけどな……」と思うかもしれない。それならそれでいいのだ。そういうことを積み重ねながら、最終的には、部下は自分なりの仕事のやり方を確立(注7)していくはずだ。上司では考えられなかったようなレベルの高い資料をつくることも、いずれはあるかもしれない。
繰り返すが、「部下を教育するのが上司の役目」というのは間違っている。部下を育てるのは「仕事」そのものであり、その仕事をするための「場を与える」のが上司の役目なのである。
(注1)ときには:場合によっては
(注2)干渉する:ここでは、必要以上に関わる
(注3)ハードル:障害
(注4)エクセルやらパワーポイント:コンピュータのソフト
(注5)創意工夫:新しいアイデアや工夫
(注6)口出しはしない:ここでは、何も言わない
(注7)確立する:ここでは、しっかり身につける