中长文读解
現代の若者は、「温かさ」まで人から与えてもらえるものだと期待している。なにもかも、自分に向かって訪れるものだと信じている。だから、そういうものが自分にやってこないと、相手が悪い、周囲が悪い、社会が悪い、国が悪い、経済が悪い、運が悪い、時代が悪いということになってしまう。①そのような分析もけっこうだが、たとえそれらしい原因を見つけても、解決の方法を見出す(注1)ことができないだろう。自分のことならなんとかなるが、相手や周囲や社会や国や経済や運や時代は、自分の努力では変えられないからだ。
それなのに、解決策がどこにないだろうか、と②「検索」する。検索で解決するようなものだったら、「問題」とは言えないことにも気づいていない。
情報化社会において人は、自分の思うとおりにならないのは、何らかの情報を自分が「知らない」せいだ、と解釈してしまう。必死になってネット(注2)を検索するのも、また、友達の話や、たまたま耳にしたことを簡単に信じてしまうのも、「知る」ことで問題が解決できると信じているせいだ。
検索できるものは、過去に存在した情報だけだ。知ることができるのも、すでに存在している知見(注3)だけである。しかし、自分の問題を解決する方法は、自分で考え、模索し(注4)、新たに編み出さなければならない(注5)ものなのである。
自分の生き方に関する問題は、どこかに解決策が書かれているはずがない。検索しても見つかるはずがない。どんなに同じような道を見えても、先輩の言葉が全面的に通用するわけでもない。自分で生きながら、見つけるしかないのである。
(注1)見出す:見つける
(注2)ネット:インターネット
(注3)知見:ここでは、見方や考え方
(注4)模索する:探し求める
(注5)編み出す:生み出す