完成条件
中长文读解
紙は私たちの身の回りにあふれているが、日本には一般的に使われている「洋紙」のほかに、古くから使われている「和紙」がある。
洋紙は、安い価格で多量に手に入れる針葉樹や広葉樹の、皮を取り除いた幹(注1)の部分を原料とする。一方和紙は、主に楮、三椏、雁皮という木の、皮の部分を使用する。また、洋紙は表面に凹凸が少なく印刷に適しているが、和紙は表面が滑らかでなく印刷には向かないという違いがある。しかし、和紙には丈夫で強く、さらに劣化(注2)しにくいので長期間保存ができるという利点もある。
日本では6世紀ごろからは和紙が使用されていたが、明治時代になり洋紙が輸入され始めると洋紙が一気に広まった。手作りで製造されていた和紙に対し、洋紙は早くから製造過程が機械化され、大量生産による安価で安定した供給が可能であったためである。その結果、和紙は洋紙に対抗できなくなり、和紙産業は衰えた。しかし、これをきっかけに和紙の製造過程も機械化が進められた。
現在日本国内で広く用いられているのは洋紙だが、和紙は和紙でなければならない分野で活用されている。書道や絵画だけでなく、その美しさが評価されて壁紙や便箋、封筒などにも利用されており、海外でもその価値が認められている。また、丈夫で傷みにくいという利点を生かして美術作品などの修理・保存にも使われている。今後も残していきたい伝統文化である。
(注1)幹:木の、根から上のほうに伸びて、枝・葉を出す部分
(注2)劣化:品質が低下する